SNB感染対策情報局

結局のところ、次亜塩素酸水はコロナに効くの?

次亜塩素酸水はコロナに効くの?

二転三転した経産省の評価

新型コロナウイルスの流行により、
消毒用エタノールなどの消毒薬が各地で入手しにくくなり久しいですね。

その状況を打開するため、2020年4月、
経済産業省が「製品評価技術基盤機構(NITE)」に要請して作られたのが
新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価に関する検討委員会
でした。

この委員会で検証された第一弾の除菌剤は、
特に新型コロナウイルスへの効果が見込めるものとして注目が集まっていました。
多くの除菌剤が「効果あり」と評価される中、
大きな波紋を呼んだのは「次亜塩素酸水」についての検討結果です。

比較的安価で、入手しやすく、安全性も高かったため
多くの人や店舗、学校法人、企業が使っていた「次亜塩素酸水」でしたが
委員会の評価が二転三転したのです。

一方、断片的な報道で「結局いいのか悪いのかわからない
という方も多いのではないでしょうか?
まだ時折、手指消毒用に次亜塩素酸水のスプレーを置いている
店舗をみかけることからも、
正しい次亜塩素酸水の使い方が浸透していないと感じます。

さて、今回の記事では
・どうして評価がコロコロ変わったのか
・結局次亜塩素酸水はコロナに効くのか
・正しい次亜塩素酸水の使い方
について、次亜塩素酸水の科学的な性質から徹底解説します!

次亜塩素酸水の対コロナ効果 評価の変遷

【第1回】実はここでほぼ答えが出ている……

第1回の検討委員会では、除菌剤の検討を行うにあたって
その時点で効果がある可能性の高い除菌方法を列挙し
入手のしやすさや経済性、これまでの文献等を検証しています。
その結果「次亜塩素酸水」は検討対象に入った、ということになります。
が、ここで注目してほしいのが、経産省及びNITEが公開している資料……
特に黄色い枠で囲ったところを読んでみてください。
※以下、HPより抜粋したものを貼り付けます。

次亜塩素酸水は手指消毒に推奨されない
次亜塩素酸水は一般家庭で使用するには注意が必要

そう!すでに以下の点は疑問視されているのです!
・手指消毒への使用
・生成後の使用期間の限定
・使用方法による効力発揮のムラ

さあ、次の委員会の報告を見てみましょう。

【第2回】インフルエンザウイルスでの検証:効果あり

第2回の検討委員会では、新型コロナウイルスと同じ
エンベロープをもつRNAウイルスであるA型インフルエンザウイルスで
各種除菌剤の効果を検証していました。

結果、次亜塩素酸水はエタノールと同等の効果を発揮していることがわかりました。

【第3回】次亜塩素酸水の検証なし

【第4回】新型コロナウイルスでの検証:揺れる効果……

pHや有効塩素濃度(報告書内ではACCと記載)、
また、ウイルス液との混合割合により、効果が揺れています。
そのため、効果の確認は次回に持ち越しに。

そして、これと同時に経産省が公開したファクトシート
次亜塩素酸水の販売実績、空間噴霧について」が
抜粋されニュースになることで、冒頭に述べた「大きな波紋」が
生じる結果となったのでした。

波紋を呼んだのは大きく分けて2つの報道です。

①「次亜塩素酸水の新型コロナウイルスへの有効性 確認されず」
これについては、検証の場においては「現時点では」という但し書きが
ついていたのですが、②の話題性から、誇張した表現が目立ちました。

②「次亜塩素酸水の空間噴霧に効果なし
これについては(2020年7月現在では)紛れもない事実です。
これがなぜ波紋を呼んだかというと、多くのメーカーが
次亜塩素酸水を噴霧することで空間除菌ができる
と宣伝(正しくは、そう想起されるような書き回しですが)していて、
多くの人がそれを信じていたからです。

そして「次亜塩素酸水は嘘だったんだ」と多くの人が落胆し
その騒動がすっかり落ち着いたたころ、
次の報告で最終的な検証結果が出たのです。

【第5回】次亜塩素酸水は条件によって効果あり

これ、もしかしたら知らない人もいるのではないでしょうか?
そう!最終報告では「条件付きで効果あり」という結論に至ったのです。

その条件はなにかというと
汚れ(有機物:手垢・油脂など)をあらかじめ除去すること
十分な量を使用すること
・電気分解・非電気分解性溶液は有効塩素濃度35ppm以上
・ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムは有効塩素濃度100ppm以上

この条件を満たせば
次亜塩素酸水は新型コロナウイルスに有効」という結論なのです。

しかし、どうしてこの結論に至るまで、検証結果が揺れたのか?
そしてなぜ、次亜塩素酸水はこれだけの条件を必要とするのか?
という部分がわからなければ、不安で使えない!
という方も多いと思います。

実はその謎は、次亜塩素酸の科学的な性質に由来します。

次亜塩素酸水の除菌メカニズム

次亜塩素酸の高い反応性が、除菌効果につながっている

……という話は、聞いたことのある人が多いのではないかと思います。
では、なぜ「反応性が高い」のか、というところをご説明します。

次亜塩素酸水の主な有効成分は「次亜塩素酸 HClO」です。
 H:水素原子
 Cl:塩素原子
 O:酸素原子
この3つが連なった分子です。

元々、次亜塩素酸は少々無理のある構造をしています。
なぜかというと、HClOの中からClを仲間はずれにした
「OH-(水酸化物イオン)」の方がよっぽど安定するからです。

この「-」は「電子」と呼ばれるものです。
原子や分子にとって、自分の性質を左右するとても大切なもの。

実はClも「Cl-(塩化物イオン)」の状態が安定するのですが、
困ったことに、電子はOHのOに奪われてしまいます。
すると、もともとOHと一緒にいるために余分な電子を持っていなかったClが
さらに電子を奪われるので「Cl+(塩素ラジカル)」になります。

※電子は数字で表すと「-1」なので、増えるほどマイナスに、
奪われるほどプラスになります。

さて、この『Cl+(塩素ラジカル)』が必要としているのは、実に電子2個分。
電子を探して、Cl+は近場のありとあらゆる物質と反応して
電子を奪い、安定なCl-へと落ち着いていきます。

その過程で壊されるのが、菌やウイルスの膜やDNA・RNAなのです。

「反応性が高い=不安定」だから検証結果が揺れるし
使用条件が細かくなる

上記の通り、次亜塩素酸は、塩素ラジカルCl+が
電子が2個ほしい……じゃなきゃやってられない!」と
周囲の物質から電子を強奪していく、
その激しい化学反応の過程で効果を発揮します。

しかし「ありとあらゆる物質と反応」と書いた通り
その対象は菌やウイルスだけではありません

そしてその反応は「激しい化学反応」であることから、
次亜塩素酸水の中にちょっとゴミが入っただけでも
猛烈に反応が進むのです。

無論、次亜塩素酸水中の多くのClがCl-になって落ち着いてしまったら、
除菌効果は大幅に落ちます

これが次亜塩素酸水の「不安定性」の理由です。
その不安定性が、検証結果の揺れにつながり、
最終的に提示された使用条件の細かさにつながったのです。

結局、次亜塩素酸水はコロナに効くのか

効く!……けれど、その不安定性の考慮が必要

NITEの最終報告の通り、
次亜塩素酸水は新型コロナウイルスに効果があります。

詳細な説明は省きますが、そもそも次亜塩素酸水の除菌効果は
そのメカニズムをもってすれば次亜塩素酸ナトリウムをも凌駕し得るものです。

次亜塩素酸水の反応性の高さ(=不安定性)を
除菌のために発揮させるためには、
以下のポイントを押さえる必要があります。

・長時間の放置厳禁
・日光厳禁
・有効塩素濃度の徹底管理
・有機物厳禁
・少量では効果がないと考える

これらのポイントを、具体的にどうすればいいのか
次項で説明します。

 

正しい次亜塩素酸水の使い方

作るときのポイント

①指定の有効塩素濃度を守る
 次亜塩素酸水は作り方が多種多様ですが、
 NITEが推奨した濃度は2通りでした。

 ▽ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム
  塩のような粉を水に溶かして作るタイプです。
  生成機が必要なく、粉の状態では保存がきくため、
  入手しやすく手も出しやすい製品です。
  これは、有効塩素濃度が100ppm以上になるように作ります。

 ▽それ以外の生成方法
  電気分解生成からイオン交換、錠剤や粉末を溶かすタイプも一部存在。
  これは、有効塩素濃度が35ppm以上になるように作ります。

②有機物が混ざらないようにする
 飛沫が入らないようマスクを着用したり
 手あかが混ざらないように手袋を着用することをお勧めします。
 また、タンクやスプレーボトルも汚れの付着やゴミの混入がないか
 確認する必要があります。

保管するときのポイント

①光を避ける
 ・遮光容器を使う
 ・光の当たる場所を避ける

②保管期限の管理を徹底する
 各メーカーで保管期間の定めがあると思います。
 次亜塩素酸水は時間の経過に従って有効塩素濃度が落ちます。
 保管期間を厳守するようにしてください。
 ※保管期間の明記がない製品は避けた方が無難です

使用するときのポイント

①有機物を避ける
 ……ウイルスと反応する前に塩素ラジカルがなくなってしまうのを避けるため
 ・物に使うとき:有機物を除去してから
 ・手に使うとき:有機物の除去が難しいため大量に使う
  ※スプレーでは不足。蛇口から出るような量を使う!

②少量では効果がないと考える
 ・有機物を除去しても、取り残しがあるかもしれない
 ・スプレーした先の材質とも反応する
 ・どれだけウイルスが存在するかわからない
 ⇒大量に使うことで塩素ラジカルの量を担保する

いかがでしたか?

一部では、ある種偏見めいた目を向けられることと
なってしまった「次亜塩素酸水」……
実際には、用法用量を守れば頼もしい味方になってくれる
ということがお判りいただけたでしょうか?

ただ正直、家庭や小規模の店舗で使うには、
面倒くさいポイントが多いんですよね……

NITEでは、洗剤に含まれる界面活性剤についても
同様の検証をされていて、効果が確認されたものも多数出ています。

管理コストや除菌剤そのもののコストを天秤にかけて
かしこく選んでいきたいですね。

手袋・マスクの使い方は大丈夫ですか?

当社では、東京・埼玉を中心とした関東一円で
新型コロナウイルス陽性者が発生した建物の消毒業務を承っております。

使用する除菌剤は、ここで紹介した次亜塩素酸水をはじめ
ダイヤモンドプリンセス号で使用された加速化過酸化水素系洗剤、
また、建物保護の観点から推奨はしておりませんが、
次亜塩素酸ナトリウムを使用しての消毒など、
お客様のニーズに合わせた薬剤選定を行なっております。

お困りの際にはページ下部の問い合わせフォームからお問い合わせください。

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