№108 常識破りの非真面な異端児を目指せ!

生涯青春 インタビュー
町田宗鳳先生と知里さんを囲んで、中村天風財団山田真次理事長、メンタルコーチ西田明さんと共に生涯青春!!

令和7年7月9日㈬

ありがとう寺 住職 町田 宗鳳 様
  千里 様

経歴と生き様の原動力

― 町田宗鳳先生の異色のご経歴と全心全力の生き様を突き動かしている原動力が何かをお聴かせください。―

 私の生き様を突き動かす原動力は二つのコンプレックスにあります。
 一つ目は、身体的コンプレックスです。健康優良児として全国で表彰される兄とは対照的に、私は虚弱児に近いほど体が弱い子供でした。兄弟でもそこまで違ったんです。
 その身体的な劣等感を克服するため、中学2年生の時に禅寺に飛び込みました。
 禅の修行は、想像していた座禅中心のものではなく、掃除や畑仕事、薪割りなどの「作務」といった徹底的な肉体労働の毎日でした。この厳しい環境で体を張って20年(小僧7年、雲水13年)を必死に生きた結果、どんどん元気になって、心身ともに頑丈になり、力比べで人に負けないくらいの自信がつきました。「頑張ればなんとかなる」という自信を深めることができたんです。
 禅寺での生活は肉体的な厳しさ以上に、閉鎖社会特有のいびつな人間関係に苦しめられました。軍隊のような厳しい上下関係の中で、いじめや暴力が頻繁に起こるドロドロとした世界でしたが、一度出家した手前、すごすごと実家に帰るわけにはいかず、歯を食いしばって耐え抜きました。
 二つ目のコンプレックスは知的コンプレックスです。
 私は京都市生まれで、小さい時から少し勉強ができるからと、京都大学を目指すことになりました。私の通っていた高校も毎年30人くらいが京都大学に進学していたんです。
 ところが受験期には禅寺での修行に没頭するあまり受験勉強が疎かになり、折しも東大紛争で受験生が京大に集中した年も重なって、不合格となってしまいました。この知的なコンプレックスが、後の米国留学への逆噴射のエネルギーとなりました。
 私が修行した京都の大徳寺は、国宝や重要文化財に囲まれた700年の歴史を持つ伝統的な禅寺でした。そこでアートや建築に対する審美眼が養われる一方、師匠が鈴木大拙(日本の仏教学者)の学弟であったことから、常に国際的な視点で禅を捉える観点が育ちました。その頃ベトナム戦争があって、寺には政財界の第一線で活躍する欧米の著名人や、良心的兵役拒否をしたヒッピーのような米国人が多く座禅に訪れ、彼らとの交流を通じて、自然と英語や国際感覚が身についていきました。日本人の友達よりもアメリカ人の友達が多かったことが、私のインターナショナルな感覚を育てたのでしょうね。
 34歳の時、京都大学理学部に客員教授として来ていたロビン・ハーツホーンいう世界的に有名な数学者が尽力してくださったおかげで、ハーバード大学神学部の特別学生となります。高卒の学歴で大学院レベルの授業についていくのは困難を極めましたが、禅の修行で培った体力と根性、そして親切な学友たちの助けによってこれを乗り越え、神学修士号を取得します。

、「ありがとう寺」(無宗派)を拠点に、密教修法の「弘法護摩」を日々実践しておられる町田住職様。

 その後、ペンシルベニア大学の博士課程に進み哲学博士号を取得して宗教学、人類学、歴史学、心理学といった多様な学問分野を駆使して一つの事象を多角的に研究する、現在の学問スタイルを確立しました。
 この手法を用いて、誰も手掛けていなかった視点から法然に関する博士論文をわずか1年で書き上げ、博士号を取得しました 。全てコンプレックスをバネにして、体力と根性だけで「何くそ」と思って頑張りましたが、禅の修行が役に立ちましたね。

混沌の世界を如何に生きるか

― 現代は、どの時代よりも多様な情報が溢れかえり、しかもどの情報も頭から信じられなく時代になっています。そのような「混沌の世界を如何に生きるか」、意思決定に迷った時や感情に流されそうになったときにぶれない軸として自分を律する信念、原理原則、穏やかな心を持つために如何に生きるかをお聴かせください。―

 世界が混沌とすればするほど、自分の内面や穏やかさ、それを確保しなければなりません。
 私も毎日護摩を焚いていて、弘法大師から「自分の足で大地に立て」というメッセージを繰り返し受けています。予測不能な社会だからこそ、自分の主体性というものをしっかり根付かせていくことが大切なのです。
 しかし、それを理念として理解してもあまり意味がないので、自分自身できちんとした方法論を持たなければなりません。
 それは人によって違います。スポーツを通じて自分の主体性を確認する人もいれば、瞑想をする人もいる。あるいは芸術活動で、自分が作品を作っているプロセスで、時間空間が消えるような体験をする人もいると思いますし、もっと庶民的に畑を耕している時とか、裁縫をしているときに、本当に満ち足りた気持ちになる人もいると思うのです。
 これを現代の脳生理学では、スローアルファ波が出ていると言われています。7.8Hzのスローアルファ波が出ている。あるいは幸福物質と言われている脳内ホルモンのオキシトシン、幸福物質と言われているオキシトシンが大量に放出されているというデータに基づいた科学的な結果もあるわけです。
 西田哲学(西田幾多郎…日本の哲学者)では、この状態を「絶対無の場所」を表現しますが、このような体験を日常的に持つことで、直観力や想像力が湧き、心の動揺も抑えることができます。
 大都会での忙しい生活や人間関係のストレスの中で、情報の洪水に奔走されているし、人間関係のストレスというものはすごいものがあると思うのですが、だからこそ真ん中にぽっかり空いたような時間空間を自分で見つけるノウハウを確立しないといけません。みんな向き不向きがあるからマニュアルは無く、各自が模索し、実践を続ける中で見出していくものです。
 週に一度、あるいは月に一度でも、手つかずの自然の中に一人で佇むといった体験は、下手な瞑想よりもはるかに深く心を静め、冷静さを取り戻させてくれます。普段、ビジネスの世界で前へ前へと進んでいるからこそ、時には全てをリセットし、自分を消していくような逆方向の動きが、揺るがない自分軸を築く上で極めて大事なのです。

宗鳳先生の全人格からほとばしるエネルギーに満ちたインタビュー。

経営者の役割、在り方について

― 100年続く会社は0・02%と言われており、ほとんどの会社は何らかの理由で倒産か廃業してしまうのです。
 会社は社長の器以上に成長しないと言われますが、心を高め、経営を高めるために、宗鳳先生のアドバイスをお願い致します。―

 企業の永続のためには、利益を社会に還元するという利他の精神が根幹にあるべきです。短期的に「俺が、俺が」という我利の経営で利益を上げたとしても、長期的な発展は望めません。実際に永続している企業の多くは、利益の社会還元を第一に考え、社員一人ひとりのアイデアや個性を尊重し、人間を育てることを経営の主眼に置いています。売上目標を声高に叫ぶのではなく、社員が自発的に働く喜びを追求することで、結果的に業績が高まるのが理想の姿です。
 そのためには、従来の学歴重視やトップダウン型の経営から脱却し、社員の個性や発想力を最大限に活かす日本型の経営に自信を持つべきです。特に重要となるのが「イマジネーション(想像力)」、中でもユング心理学でいう「アクティブ・イマジネーション(能動的想像力)」です。これは、単に無いものを想像するのではなくストーリーが勝手に展開していくように、想像が自己増殖していく力です。この力を持つリーダーや、その種を持つ若者、すなわち常識の枠に収まらない「異端児」こそが、停滞した状況を打破し、会社に新しい価値をもたらします。面白い会社、伸びる会社にするためには、そうした異端の力を持った人材を見極め、採用していくことが不可欠です。 また、ビルメンテナンス業という事業は、人々が汚した場所をきれいにするという行為であり、社会を美しくするだけでなく、従業員一人ひとりが知らず知らずのうちに徳を積むことにも繋がる、非常に意義深い仕事です。個人のレベルで見ても、掃除はカルマ(業)を浄化する最良の方法の一つです。生活環境を物理的にきれいにすることは、人々の精神性を高める上で宗教以上の力を持つ可能性すらあります。企業の活動を通じて、地域社会、ひいては国土全体をきれいにしていけば、日本の民度が高まると思うのです。

“正直、親切、愉快に”生きる

― 会社の多くの社員が「社長が感情的にならずニコニコと笑顔でいることが一番です」と求めています。
 正しい生活目標の設定〝正直、親切、愉快に〟生きるについてお考えをお聴かせください。―

 「正直、親切、愉快」といった正しい生活目標を設定することは、素晴らしいことですし、それはそれで大事なことだと思います。しかし、それが道徳律となり、金科玉条(きんかぎょくじょう=守るべき法律や個人が拠り所となる絶対的なルールという意味)のごとく自分を縛り付けることになってはダメなのです。多くの日本人は、幼少期からの学校教育によって、知らず知らずのうちに「真面目症候群」という病にかかっています。与えられた枠の中で真面目に努力することは美徳とされますが、それはその中に自分を閉じ込めることにもなりかねません。
 本当に必要なのは、もっと自由に、常識破りの生き方をすることです。私の座右の銘は、一休さんが残した「仏界入りやすく魔界入りがたし」という言葉です。仏界とは、既存の価値観の中で真面目に努力し、評価される世界。真面目症候群の世界です。そこに入るのは比較的容易です。しかし、新しい価値を生み出すためには、常識の壁を突き破り、誰も行かない「魔界」へあえて飛び込んでいく必要があります。この魔界に飛び込む勇気を持った異端児こそが、新しい技術や芸術、思想を生み出すのです。
 したがって、目指すべきは「不真面目」ではなく、「非真面目」な生き方です。これは心理学者の河合隼雄先生の言葉ですが、常識にとらわれた真面目さを脱却し、もっと自由に、肩の力を抜いて生きることを意味します。社長が感情的にならず、いつも笑顔でいることを社員が望むのは当然ですが、それは単に穏やかであるだけでなく、常識の枠に凝り固まらない「非真面目」な遊び心や余裕を持つことではないでしょうか。社員全員が魔界に入る必要はありませんが、リーダーがそうした型破りな人間を面白がり、受け入れる度量を持つことで、組織は活性化し、新たな成長の可能性が拓かれるのです。

宗鳳先生を支える奥様の知里さん、最高のコンビです! !

町田宗鳳先生と知里さんの夢とビジョンをお聴かせください

― 365日東奔西走されて真理を追究し、新しい宗教の在り方を追求し、縁ある
人々と共に挑戦される町田宗鳳先生と知里さんの未来に向けた大きな夢とビジョンをお聴かせください。―

 私たちの目下の目標は、御殿場高原にある「ありがとう寺」を、緑あふれる「緑の寺」として、そして多くの人々が集う「心のオアシス」として充実させることです。特定の思想を説く場所ではなく、様々な人が自己表現できる「心のマルシェ」のような、誰もが訪れれば元気になれる楽しく美しい場所として充実させることです。
 そして、私の昔から抱いてきた思いは、新しい宗教の形、すなわち、これから台頭するアジア文明の思想的な軸を定義づけることです。あらゆる文明にはその根底に思想的な支柱が存在しますが、アジアにはまだそれが確立されていません。
 仏教、神道、儒教、道教、ヒンドゥー教といった多様な宗教の中から最大公約数となる普遍的な思想の軸を見つけ出し、アジアの人々が共に手を取り合えるような大黒柱を打ち立てること。それが、禅の修行、米国での学問、そして世界中を巡って得た知見を持つ私に課せられた最終的な使命だと感じています。
 妻である知里は、その夢の実現を全力でサポートするとともに、「ありがとう寺」を誰もが心安らげる「平安の地」として育んでいくことを自らの役割としています。

― 社内報の読者に力と勇気と信念が沸き上がるメッセージをお願い致します。―

 社内報の読者の皆様へお伝えしたいのは、「もっと非真面目に生きよう」ということです。真面目症候群から脱却し、常識の檻を取り払えば、人生はもっと楽しくなります。人生が楽しくなれば仕事も楽しくなり、それは自ずと会社の業績にも繋がっていくはずです。
 現代の日本社会には、かつての祭りのように、人々が内なるエネルギーを爆発させ、精神のバランスをとるための「ハレの場」が失われています。日常の中に、自分を解き放つ時間と空間を意識的に作り出すことが、力と勇気と信念を持って生きるための鍵となるでしょう。

関根 今度「ありがとう寺」にうちのメンバーと行きますよ。

町田先生 ぜひいらしてください。魔界踊りでもしてください。

町田宗鳳先生プロフィール

  • 順天堂大学客員教授・広島大学名誉教授・御殿場高原「ありがとう寺」住職
  • 1950年京都市生まれ。幼少のおり、キリスト教会に通う時期もあったが、14歳のおり、家出をして仏門に入る。
  • 以来20年間、京都の臨済宗大徳寺で修行。34歳のとき寺を離れ、渡米。
  • のちハーバード大学で神学修士号およびペンシルバニア大学で哲学博士号を得る。
  • 65歳で比叡山延暦寺で密教修行、天台宗大阿闍梨となる。
  • プリンストン大学助教授・国立シンガポール大学准教授・東京外国語大学
  • 教授・広島大学大学院総合科学研究科教授・
  • 国際教養大学客員教授・都留文科大学特任教授・ふじのくに地球環境史
  • ミュージアム客員教授・オスロ国際平和研究所客員研究員などを歴任。
  • 研究分野は比較宗教学、比較文明論、生命倫理学。東京大学・名古屋大学・
  • 東京医科歯科大学・国連大学・聖心女子大学などでも教えた。
  • 外務省主催『文明間の対話セミナー』の常連メンバーとして、世界各地で講演。
  • 『人類は「宗教」に勝てるか』など日本語や英語の著書約50冊。
  • NHK『こころの時代』・『ラジオ深夜便』・『こころをよむ』などに出演。
  • 日経新聞・朝日新聞・読売新聞にもエッセイを連載。
  • 日本・米国・ヨーロッパなどで倍音効果を利用した声の瞑想法「ありがとう禅」を指導、また週末を利用した「ありがとう断食セミナー」を定期的に開催。
  • 現在は、「ありがとう寺」(無宗派)を拠点に、密教修法の「弘法護摩」を日々実践している。

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