編集・発行:公益財団法人モラロジー研究所 2010年9月1日(P14~19より引用)

「みな光る、ともに輝く――人と組織を磨くピカ一企業をめざして」

ビルメンよりも教育業

 一般的にビルメンテナンス業界では、受注や管理を担う元請けと、現場作業を担う下請けの分業体制がとられる。そうすることで元請け側は作業員育成の手間とコストが省け、固定の人件費を抱え続けるリスクから開放される。
 その中で新日本ビルサービスは設立以来、「建物オーナーと共に考え、喜びを共有し、互いに成長できる関係」を築くべく、オーナーとダイレクトに契約し、作業に下請けを介さない直営方式を貫く。現在、同社が清掃を請け負う事業所は、京王プラザホテルや立教大学池袋キャンパス、鉄道博物館をはじめ、首都圏の商業施設やホテル、病院、オフィスビル、学校、工場など百五十か所以上。その現場でお客様に直接サービスを提供する同社の中心戦力が「さわやか社員」こと千二百名を超えるパート従業員たちだ。
 「私たちは自社の本質をビルメンテナンス業というより、教育業であると考えています。」関根一成社長はこう語る。
 さわやか社員さんたちは各事業所の専属チームに配属され、通常は直接そこへ出退勤して業務にあたる。さわやか社員の提供するサービスの質はもちろん、日常の立ち居振る舞いや業務姿勢が、クライアントの満足度や契約更新の成果に直結してくるわけだ。「教育業」との言葉どおり、同社はさわやか社員の研修に、実に多くの時間と手間暇をかける。  「早朝誰一人遅刻もせずに五時半にはほとんどの人が来ています。本当にありがたい気持ちです。特に早く来て清掃の準備をしてくれている田倉さん、感謝です」「以前からレントゲン室のドアノブのビスが緩んでいたのが気になって、家から長いビスを探して取り換えました。院長先生にとても喜んでいただけました」
 これからはさわやか社員たちが、研修の一環として、日常業務における感謝の気づきを記入する「ありがとうカード」の内容だ。同社では「日本一、ありがとうの多い会社」をモットーに、カードを奨励、提出数に基づく褒賞の仕組みも整えている。新日本ビルサービスでは、清掃業務の基本など技術面の修得はもちろんのこと、会社の理念や仕事の意義など精神面の啓発を非常に重視する。
 「清掃はその根底に感謝と奉仕の気持ちがあるかどうかで、その質は十倍変わってきます。隅々まで磨かれ整理整頓された建物は、見る人の心に安らぎと活力を与えます。私たちに期待すべてのお客様に感謝し、報恩する心を磨くことが、新日本ビルサービスの競争力を磨くことにつながるのです」(関根)

我慢の限界を超えて

 関根社長の教育の仕掛けは、多彩な褒賞制度にも反映されている。「ありがとうカード」や「改善提案」の提出枚数別のほか、ユニークなのが永年勤続表彰だ。身近な人生目標をと、五年勤めたさわやか社員から対象となり、十年、十五年勤続と続く。創立十八年目の同社に「永年」は大げさに見えるが、そこには五年でも定着して勤務してくれた社員に対する、関根社長の感謝がある。求めても集まらず、入っても辞めていった草創期を思えば、勤続五年は永年に近い価値があった。
 関根社長が新日本ビルサービス(株)を設立したのは、三十九歳のときだった。満を持して起業かと思いきや、「計画性だとか格好いい理由なんて何もないんです。ただ親父から“苦労して這い上がってこい”と蹴っ飛ばされて創業したようなものですよ」と振り返る。
 当時、関根社長は、マットやモップのレンタルなど環境用品サービスを手掛ける新日本セシオ(株)の専務取締役の席にあった。同社は父の直幹氏が、創行企業のクリーニングの(株)武蔵屋に続き、昭和四十三年に興した会社であり、長男である関根社長は大学卒業後、他社修業を経て五十六年に入社していたのである。そのまま順当にいっていれば、二代目社長の席に収まっていたはずだった。
 入社後の関根社長は、後継者としての期待感を背に、実績をつくろうと営業活動や人脈づくりに人一倍の汗を流した。その一環として地元のJC(青年会議所)にも入会。異業種交流に励むのだが、そこは血気盛んな若者同士、会は決まって二次会、三次会と深夜未明まで続く。数十万円を一夜で使い果たし、深酒となれば翌日は当然仕事にならない。  「無駄金を使うな。生きた金を使え!」
 見かねた直幹氏の叱責もどこ吹く風。
 “これだけ懸命に身体を張ってやっているのに、何を言っているんだ”と反発する気持ちが強く、父である社長の真意が理解できなかった。
 ナンバー2の専務として出席する役員会では、激昂した直幹氏が近くの物を投げつけながら「出て行け!」と怒鳴り、関根社長が席を蹴って退出する展開が続いた。当然、役員会は機能不全となる。
 「父も困ったんでしょう。ある日“そんなに生意気を言うのなら、自分でゼロから這い上がってみろ”と、ビルメンテナンス会社の立ち上げの話を持ち出してきたんです。私も我慢の限界でしたからね。二つ返事でした(笑)。今思うと、父は“このまま一成に後を任せたら危ない”と思ったんだと思いますね」(関根)

窮地を救った逆転の発想

 そうして平成五年、新日本グループの一員として、資本金二千万円、社員四名で新日本ビルサービス(株)は産声を上げた。創業のやる気と膨らむ将来構想とは裏腹に、初期費用と固定費で資本金はみるみる減っていった。飛び込み営業で取引先をつくろうにも、実績のない零細企業においそれとフロアを預ける先はない。十か月後には資金の底が見えてきた。頭を抱えた。いまさら親父に無心するわけにはいかなかった。熱意で押して押しまくる以外、道を開く方法はない。
 JCの同業の先輩に頼み込んで修業をさせてもらい、清掃のやり方から見積りの出し方までノウハウを学んだ。そうして徐々に実力はついたが、やはり実績のなさが響き、価格競争で負けてしまう。
 いったいどうしたら取れるのか――。
 どん底で逆転の発送が生まれた。当時の業界見積りは平米当りいくらの積上げ式が常識。しかしこれだと費用構造がブラックボックスで、依頼主には何にどれだけかかるのかがわからない。そこで関根社長はこの作業量なら時給○百円の作業者が何名、資機材費はこれだけ、それに管理費と営業利益を二〇パーセントいただきます、という具合に、内訳をガラス張りにした見積書を作成。これが「わかりやすい」「安心できる」と評価を得、中には金額勝負で負けても「新日本さんに」と選んでくれる先まで現れた。
 正確な見積りを出すには、対象フロアの平面図を調べ尽くし、トイレは一基○分、階段は何階で○分と総作業時間を割り出す必要があった。そこを何人、何時間で清掃できるか。手計算の気の遠くなる作業。ノウハウはつくるしかない。一件一件、実際にかかった実測値を積み上げて業種別、タイプ別の標準時間を蓄積していった。
 積算を繰り返す中で関根社長は、競争力の源泉が“人”にあることを痛感した。見積り金額の七割は人件費。同じ面積でも、より早く、キレイにできるようになれば見積りも安くできる。何より日々改善の前向きな業務姿勢が顧客に喜ばれ、長期契約、増契約へとつながる。
 ――うちの差別化は人づくりしかない。
「ビルメンテナンス業よりも教育業」との信念が、関根社長の胸中に結実した。

生涯青春!の舞台をつくる

 さわやか社員が二百名を超えた五年目から、体系的な社員教育に乗り出し、現在の研修スタイルをスタートさせた。施工分野も商業施設から病院、ホテルと枠を広げ、エリアはやがて都心にまで伸びる。そこで壁にぶつかった。
 熱意の営業で八重洲のオフィスビル、銀座のホテルを受注するも、肝心の清掃スタッフの確保がうまくいかなかった。募集をしても集まらず、やむなく頼んだ派遣社員は任せるに足りない。時給をギリギリまで上げ、年齢制限をなくした。すると六十代の主婦や定年を迎えた男性が多数集まった。清掃は立ち仕事でスピードも要求され、決して楽な作業ではない。不安もあったが、できるだけ募集条件を拡大して採用した。
 高齢者チームによる事業所が増えていく中、関根社長はある変化に気づいた。「お掃除を続けるうちに、皆さんがどんどん若返るのがわかるんです。体を動かして健康になるし、清掃後にピカピカになるから気持ちもよく、お客様にも感謝される。“こんないいことないです”とイキイキと話される皆さんを見て、自分の使命はここにあるのかなと気づきました」。
実際のところ同社には定年がない。労働集約型の業種の割に、さわやか社員の平均年齢は五十代半ばと高く、中には七十歳から働き始めた“新人社員”もいる。最高齢者八十一歳というから驚きだ。
 あるフードコートで幼子が飲み物をこぼしたときのこと。六十代のさわやか社員がサッと寄り、床を拭き取るだけでなく、叱責する母親には笑顔を、泣く子には優しく声をかける。まあある都心のオフィスでは、始発で現場入りする七十代のさわやか社員が、始業までに掃除を済ませ、出社する社員に元気な挨拶を向ける―。
人生の苦労を皺に刻ませた丸みのある対応、細やかな心配りを指示する顧客が相次いだ。ある整形外科病院に通う二人のさわやか社員は、請われて継続十年目を超え、院長との信頼関係から、同院のリニューアル工事を新日本ビルサービスが請け負うまでにつながった。
 専門の営業部門のないまま紹介受注で取引先は増え続けた。また、清掃業務から電気・消防・給排水・空調設備の保守点検、営繕・リニューアル業務に発展した。そして、商業施設のメンテナンスからその運営管理を担う支配人業務へと、顧客の悩みやご要望に一緒に取り組む中でサービスの範囲が垂直に広がり、環境サービスをトータルに提供する現在の事業体制が形づくられた。

老・壮・青が調和する未来へ

 「社員は宝だ。社員を大切にしない会社は絶対に発展しない」
 父・直幹氏が口ぐせのように語っていた言葉は、数々の追体験を経て、関根社長の心に深く刻まれるようになった。
 戦後のバラックが並び立つ東京で、裸一貫からクリーニング店を興した父。一枚のワイシャツにも深々と頭を下げるその様か、ついた呼び名が「最敬礼のクリーニング屋さん」。一軒一軒の御用聞きから、やがて国鉄・新幹線のリネンサプライ業務を請け負い、新日本グループの礎を築いた。九年前、その生涯を閉じる最期にこう言い遺したという。
 「もっと謙虚になることだ。自分を低くすることだ。お前たちがしっかりやっていることが、俺の最大の誇りだ」
 この言葉を胸に、関根社長は人づくりの一番の基本を“挨拶”に置く。朝礼でも研修会でも、まずは地声で響き渡るほどの挨拶と深いお辞儀からはじめる。
 「お前は頭が高い、そんなんじゃ商売にならないぞって、親父に何べんも言われました。二代目というのは、なかなかできないものですね(笑)。でも、少しわかってきました。心がないとお辞儀はなかなか深くできないんですね」
 今年の研修会で関根社長は繰り返し、さわやか社員にこう語った。
 「ご契約いただいているお客様だけが私たちのお客様ではありません。社員、家族、地域の人たち、お取引先など、私たちに期待する人すべてがお客様です。そしてこれからのお客様への感謝と奉仕の心が清掃をする原動力になり、結果、真のお客様第一主義を実現できるのです」
 関根社長にとっては、日々笑顔で現場を支えてくれる、千二百名のさわやか社員一人ひとりが感謝の対象でもある。そして会うたびに若返り、美しく歳を重ねるその姿に「生涯青春」の輝きをみる。
 毎年四月、日ごろの感謝をこめて開催する褒賞パーティーには、ユニフォームを脱ぎ、美しく着飾ったさわやか社員たちが一堂に集まる。
 「皆さんには、目いっぱいドレスアップしてきてくださいって言ってあるんです。そして当日、私が“惚れ直しました”っていうと会場から大歓声が上がるんです(笑)。幸せな仕事です。将来はさわやか社員を三千名にして、美しいユニフォーム姿の皆さんと、生涯青春と喜びあえる仕事のあり方を社会に浸透させていけたらと思います」と力強く語る。
 現場のさわやか社員をサポートし、お客様と共に最高の施設環境を創り上げる「若い本社スタッフ」の成長が一番大きな願いでもある。関根社長はまた、定期清掃を担う若手チームの育成にも期待を寄せる。老・壮・青の三世代が調和し、日本を元気にする“青春企業”の実現を見届けるまで、生涯青春で駆け抜けるつもりだ。

人間力を磨く最重要研修「さわやか社員研修会」

――まず5Sの徹底と再確認、“清掃を極めた会社”をぜひ実現させたい。“日本一美しい事業所づくり”。これは夢や幻ではない。絶対にできると思います。
――強い心を持つと同時に、キレイな心を持ち続けなければいけない。純粋に真摯に人に接しなければいけないと思います。キレイな心が表れる清掃の仕事は、心の仕事だと思います。
 毎年五月から六月にかけて、全さわやか社員を対象に実施される研修会は、関根社長が最も力を傾ける、同社の最重要研修だ。上記は終了後のレポートである。
 会では、まず関根一成社長から当期の社長方針が語られる。第十八期目の今年は「ピカ一の清掃をめざす」「心と技術を磨き、プロとしての責任を果たす」を柱に、より付加価値の高いサービス追求の意義を経営信条にさかのぼって説明。その後、マナーや清掃業務の基本の講習をはさみ、関根社長のモットーである「生涯青春!」に関し人生目標を持つ意義が厚く語られる。
 この研修会のポイントは参加率をなるべく上げるため、拠点ごとに十四会場に分けて行う点にある。少人数になれば、より近い距離での一体感ある会ともなり、メッセージも伝わりやすい。ただ場所と人は違えど、ほぼ同じ内容を十四回。
 「“こんなに時間をかけていいんですか”と社員に言われた時はグラッときました。でも教育の成果はすぐに現れるものではありません。最近は底力がついてきた実感があり、信じてやり続けてよかったと思っています」(関根)

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ご自身の経験をありのままにご講話頂きました。

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